地べたの家(神戸)
地べたの家とは、なんと特徴的な名前だろう。
その名に違わず、階高も建物の高さも、とても低く抑えられている。
この重心の低さに落ち着きを感じるのは、竪穴式住居の頃から連綿と続く、日本人のDNAではないか、と松澤さんは言う。
重心が低くなっているのは、1階が全て土間だからだ。広く土間をとった家は最近多いが、1階が全て土間という割り切り方は、なかなかできるものではない。
そこには、郊外生活を思い切り愉しくするには大きな土間があるといいという、松澤さんの経験則がある。鹿沼の自邸、埼玉の家、生活を愉しむために、土間をどんどん大きくとって、この地べたの家では、1階が全て土間になった。
建築物は「大地を借りているんだ」というイメージを忘れてはいけない。土間の魅力は、何と言っても地面につながっていることだね、と松澤さん。
室内と地面を切り分けないことにより、特に上津台の北の里山は、地続きでどこまでも自分の家のように感じる。
外部との境界が曖昧になることにより、人を招きやすくなる。道行く人が、犬の散歩がてら、ひょいと遊びに来る。人と人とをつなぐ、「縁」の場としての空間も形づくる。
もう一つの特徴的なのは、大きな開口部と、大きなガラリ戸。住宅街が続く南には近く、里山が広がる北側には遠い目線を意識している。北側と南側のすべての開口部にはガラリ戸が設けられ、閉めた時と開いた時の外観の印象が違いがおもしろい。
室内側からも、ガラリを通じて入ってくる光は印象的。遮光不透視ながらも、空気を導き入れる工夫がある。
今回びおソーラーの空気は、階段室をチャンバーとして、床面に吹き出す構造となっている。
床下空間がないため、土間空間を暖める工夫が必要だ。
また、2階の床下エアコンは、2階の床下をダクト代わりとして、1階の冷暖房をしつつ、2階の床の熱輻射にも寄与している。
松澤さんは、なんでも手から生み出す、手の物語を地でいくような方だから、与えられたものを組み合わせるだけではない工夫が随所に見られ、うれしくなる。