続続・夏暑く、冬寒い家からの脱却をめざして!

びおソーラーの計画

びおソーラーの松原です。

「夏暑く、冬寒い家」を快適にするための工事は進んでいます。今日は「快適化の隠し味」的な役割をする「びおソーラー」の導入方法についてお話します。

びおソーラーの家に必要な条件とは

びおソーラーの家を計画する際に考慮しなければならない重要な条件が4つあります。

① 建物の断熱・気密性を高めて「保温力」を確保する事

今回のリフォームにおいては、既存の断熱・気密性に問題があったので、まずはこれを改修して「保温力」を高める事が最重要課題です。前回のブログで現況について説明しましたが、床も壁も外気の影響をものすごく受けていたと思われるので、既存仕上げの内側に新たな断熱材を施工して、床、壁、天井の表面温度が下がらないようにします。

② 集熱すること。びおソーラーによる集熱だけではなく、ダイレクトゲインの効果も含めて考える。

当該建物は、ほぼ真南に向いて建っており、敷地南側は道路を挟んで公園という日照を遮るものがない恵まれた環境にあります。現況においても南面の開口部から入る日射のおかげで、南側に位置する部屋は冬でも暖かくなっていましたが、日当たりの悪い北側の部屋との温度差はかなりありました。既存の開口部に関してはアルミサッシ+複層ガラスという組み合わせなので、そのまま利用する事にします。問題はびおソーラーの集熱パネルをどこに、どのように設置するか?です。

③ 蓄熱すること。「快適化」の影の主役は「蓄熱」にあり。集熱による室温変動をマイルドにしてくれる。

新築におけるびおソーラーでは、集熱空気を1階の床下に送って、基礎の土間コンクリートに蓄熱をさせながら建物全体に広げていくという手法を取るのですが、今回の家の床下は土で、土間コンクリートが存在しません。また床がALC版で作られていて構造的にもこれを撤去する事はできないと思われるので、通常の床下を利用する「蓄熱」は無理と判断しました。

④ 熱と空気の動きをデザインすること。「頭寒足熱」の温熱環境を実現するためには、熱と空気の動きをしっかり理解して計画することが重要。

リフォーム物件の場合、③のような条件から床下利用をあきらめなければならないケースは多いです。では直接室内に吹き出させてはどうか?と考える訳ですが、びおソーラーの熱源はお日様しかないので、雲で日が陰ったりすると急に風温が下がって不快に感じてしまう事があります。心地よい温熱感として「頭寒足熱」を実現するためには、集熱空気を足元まで持って行って「点」で吹き出すのではなく「面」で熱を広げられるようにすべきと考えます。

 

集熱パネルの設置方法

今回のリフォーム範囲は1階のみであって、2階や屋根には一切手を付けません。よって屋根上での集熱はできないので2階のバルコニー手摺を利用した壁面集熱を考えました。1階の床面積が35坪ほどあるので、通常であれば集熱パネル5枚くらい必要とするところですが、集熱空気の流し方の条件などから下の写真のように横型集熱パネル3枚で計画しました。

磐田市T邸

集熱パネルの設置計握案

磐田市T邸

集熱パネルの設置案(断面計画)

1階のリビング・ダイニング前にサンルームを設けて内外の中間領域とし、このフレームに集熱パネルを設置してはどうかと考えました。集熱パネルの設置角度は、冬至・南中時の太陽入射角度に合わせて60°で取り付けます。

この家には「コタロー」というワンちゃんがいて、今は2階で暮らしていますが、ご主人様が1階で生活するようになった時には、このサンルームがコタロー君の居場所になるでしょう。コタロー君が快適に過ごせるサンルームにすることも重要なテーマなのです。

集熱空気の流し方

④ 熱と空気の動きをデザインすること、で記述したように床を「面」で温めるようにしたいと考え、畳敷きだった旧和室の部分に下図のような集熱通気層を設けて床下全体に集熱空気が回るようにします。この手法は過去にも実施した経験があり、床全体がほんのり暖かくなって気持ちが良かったので、同じ効果を期待しています。

磐田市T邸

床下集熱通気層の範囲

磐田市T邸

床下集熱通気層の構成

磐田市T邸

集熱通気層施工の様子

旧和室部分の床は畳の厚み分、ALC版を下げてありましたので、まずはフェノールフォーム断熱材をALC版上に敷き込み、その上に通気根太を取り付けて集熱通気層とします。

③ 蓄熱すること、で記述したように「蓄熱」は快適な温熱環境をつくる上で、とても重要な役割をしますが、今回は構造的にまとまった蓄熱部位を設けることが出来ません。この辺りが実際の暮らしの中でどのような結果をもたらすのか完成後も見守っていきたいと思います。ただ今までのような底冷えは無くなると思うので、その点だけでもかなり住み心地は改善される事でしょう。(松原美樹)