「おいしい家」に住みましょう!

びおソーラーの松原です。

2022年も冬至を過ぎました。明日はクリスマスイブで、それが終わると大晦日。あっという間に新しい年がやってきますね。

前回は「おいしい家をつくりましょう!」というタイトルで、長めのお話を書かせていただきましたが、どちらかと言うと建築人向けの内容でした。今回はおいしい家の事を住まい手に向けて書きたいと思います。

「自然室温で暮らせる家」に住むということ

前回の投稿で「真の省エネルギー住宅は、自然室温で暮らせる家だ!」と書きました。みなさんがどのように受け止められたかは分かりませんが、人類と地球の未来を考えると「使わずに快適を得る工夫」というものが絶対に必要だと思います。ただ「自然室温で暮らせる家」は、決して便利な家ではありません。住まい手自身が自然と応答しながら暮らしていくことを強いる家でもあります。季節や時間で変化していく太陽や季節によって向きが変わる風のことなどを感じながら窓を開けたり、閉じたり、簾や葦簀で日を遮ったり、打ち水したり、風鈴を吊るしたりと、自分自身で快適となるように積極的に関わって行かなければならないのです。下図はびおソーラーの取扱説明書ですが「この花が咲いたら」とか「こういう野菜が八百屋の店頭に並ぶようになったら、季節モードを切り替える」というような感じで、どのように暮らすかを決めるのは住まい手自身の肌感覚だけであって、機械が自動的にやってくれるという事はないのです。これを「不便」と捉えるか「楽しい」と捉えるかは人それぞれ。「え~っ、そんな面倒な事やりたくないよぉ」という方には、向かない家と言えるでしょう。でも電気代等の光熱費がどんどん値上がりしてきている昨今において「エアコンが一番経済的!」とは言い切れなくなってきているのも事実。「だから太陽光発電」というのも安易すぎる判断でしょう。やはり私たち自身がエネルギーの使い方を考えて、変えていかなければ「SDG’sだ!」などと言ったところで、持続不可能な世界になってしまうと思います。

びおソーラー取扱説明書

「おいしい家」に住もう!

「おいしい家」とは、見映えの良さだけでなく、室内の空気感や温熱感に優れた心地よさを感じる家と定義しました。その心地よさを極力エネルギーを使わずに実現する方法として「自然室温で暮らせる家」を提案したのですが、どのように思われたでしょうか? 設備的にびおソーラーを導入すれば実現できるという事ではなく、建築と住まい手の行動によって「おいしさ」が得られるもの。できるだけシンプルに、丁寧に、正直につくること、そして暮らすことが大切だと思います。

最近すごく感じることなのですが、建築に限らず人が作るモノには、それを作った人の想いや考え方、人間性などが形になって表れてると思うのです。前回は「建築と料理の共通性」について述べましたが、料理においては、食べた人に「おいしい!と言わせたい」という料理人の意志が、味や形を創り出しています。それはプロの料理人だけではなく「愛する家族のために」という思いを込めて作るお母さんの料理にも表れていると思います。私がこれまでに見てきた建築においても「この家に暮らす人のことを思って作られた家」は「おいしい家」になっていて、住まい手も喜んでいましたが、恰好は良いけど、心のこもっていない家は「まずい家」になってしまっているものもありました。今年は20年以上前に大手ハウスメーカーで建てられた住宅のリノベーションに関わる機会があったのですが、施主の住み心地に対する不満を聞いた上で解体に立ち会ったところ「作り方に愛がないなぁ」と感じました。ハウスメーカーの仕様通りなのでしょうが「この家を作った人たちは、ここに住むことになる人の事を少しでも考えたり、思ったりした事はあるのかな?」。少々怒りの混じった感想を持ちました。どんなに工業化が進んでも最終的に「家」を仕上げるのは人の手によるので、その手に心がなければ絶対に「おいしい家」にはならないでしょう。このような家に住まなければならなかった事を気の毒に思いますが、それを選んだのは施主自身でもある訳ですから「ブランド名」だけではなく、本質的なものを見極める目や知識を身に着けることが大切と感じました。「本質的なもの」とは私は「人」だと思います。ハウスメーカーのような大きな組織だと接するのは営業担当者だけで「営業の方の対応が良かったので決めました」などという話もよく聞きますが、その人が現場で家をつくるわけではないので「誰がどんな仕事をしているのか」を知ることが重要です。私の経験において「現場が汚い(特に床下)会社は、仕上がりがどんなに綺麗でも信用できない」と思っていて、あとでトラブルが発生する確率が高い。人のやる事だからミスは仕方ないとしても、その後の対応にもあまり誠意が感じられず、施主を気の毒に思った事が何度もありました。細部にわたって気配りできる人たちの仕事場では、そのような事は起こらないのです。最近は見映えと値段だけの「ファストフード的な家」が多いように感じますが「食堂のおやじ(おふくろ)が作る愛情たっぷりの定食的な家」の方が、「つくる人」と「住まう人」の顔がお互いによく見えるので、味わい深い家になるでしょう。長く暮らしていく家だからこそ、心が通い合う家づくりをして欲しいと思います。

私は「びおソーラー」というモノを作って提供する仕事をしています。昔は全ての部材を一人で組立てて、「しっかり働けよ」と声をかけてから出荷したものですが、今は工場にお任せする部分が多くなりました。びおソーラー部材は、集熱パネルは屋根の上ですし、ファンボックスは小屋裏や床下に設置されて、あまり目にすることはないと思いますが、彼らの働きによってその家にお日様が住みついてくれるかどうかが決まるので、極力丁寧に仕上げて送り出すように心掛けています。そんな想いが届いているのか、いないのか分かりませんが、これからも「愛されるびおソーラー」を目指して努力していきます。(松原美樹)