通風について考える

びおソーラーの松原です。

梅雨入りして天気の悪い日が続いています。この時期、みなさんは窓を開けて過ごされますか?それとも窓を閉めてエアコンを使われているのでしょうか?わが家は軒の出が深く、普通の雨では降り込むことはなので基本的には窓を全開にして風通しを良くしています。ただ内外が同じ湿度になるので昨日などは室内の湿度が85%になっていて、以前にご紹介したオオグソクムシの水槽がびっしょりと結露しました。(汗) 最近はコロナ対策として窓を開けてしっかり換気をした方が良いと言われているので実践されている方も多いと思いますが、もしそういう理由がなかったら世の中の人は、どれくらい「通風」をされるのでしょうか? 私は毎日、夕食後に愛犬と近所を散歩するのですが、その時の印象として窓を開けている家が1/3、窓を閉めてエアコンを掛けている(室外機が動いている)と思われる家が2/3くらいかなと思いました。まだそんなに気温は高くないですが、やはり湿気を嫌っての事なんでしょうか。窓を開ける気にはならないようです。只今の私の机の上の湿度計は75%を示していますが、そんな高湿度が続く中で今日は「通風」のお話をしたいと思います。

「通風トレーニング」という本

今から5年ほど前の事ですが、南 雄三さんが「通風トレーニング」という本を出版されました。この中ではYKK APの技術スタッフの協力により「FlowDesigner」という通風シミュレーションプログラムを使って様々な条件における風の動きや換気効果を解析しています。その一つとしてウィンドキャッチャーを使用して「間接風をつかむ」という検証が行われていたのですが、ちょうど静岡の工務店さんから窓に取付ける「ウィンドキャッチャー」の設計を依頼されていたところだったので風の動きを理解するのに、この本がとても参考になりました。

通風トレーニング

通風トレーニング(南 雄三著)

通風トレーニング

通風シミュレーションによる解析

大変参考になったとは言うものの、私は何でも素直に従う性格ではないので、本当にシミュレーション通りの風の動きが起きるものか自分の目で確かめてみたくなりました。

通風実験をやってみる!

恐らくこの本に書かれている事を実際に試してみようなどと考えて、行動に移した人間は他にはいないでしょう。YKKさんだって机上計算による検証のみで風洞実験まではしていませんからね。風の動きを読むというのは、とても難しいです。太陽は規則正しく運行されているので予測もしやすいですが、風はそうは行きません。コンピュータによる通風シミュレーションでは→→→がいっぱい描かれた図が出力されて、何かわかったような気にはさせられますが、本当のところはどうなのか?例えば下図のようなシミュレーション結果が提示されたとして、南(図面下を南と仮定)の窓から入った風が部屋の中を抜けて北側の窓から出て行く様子が示されていますが、これはどちらかと言うと「人の願い」であって「風の想い」とは異なると思うのです。風は自由で、人の思い通りにはなってくれないもの。それを自分たちにとって都合よく利用するためには、もっと「風」というものを知る必要があると思い、通風実験をやってみようと思いました。

私がつくった通風実験棟は間口2.73m、奥行き2.73m、高さ1.89m。隣家との間を流れる風をいかにキャッチできるかを検証することを目的としているので、実験場の壁を隣家と見立てて、これと平行に開口部を設け、開口とウィンドキャッチャーの位置関係を条件を変えて検証できるようにしました。室内には455mm間隔で天井から床まで糸を張り、これにリボンを取付けて風の動きを観察できるようにしています。風は3台の大型送風機で起こし、送風速を変えて風の入りと出の量を測定すると共に室内の空気流れを観察するというものです。

通風実験棟

引違いサッシを4本取付け、8ヵ所の開口の開閉条件を変えて、室内の空気の流れ方を観察できるようにしました。

通風実験棟

実験棟の開口部

プラダン製のウィンドキャッチャーは位置と出幅を変えられるようにしています。

通風実験棟

実験棟内部

天井から床に向けて張った糸にリボンが取り付けてあり、空気の動きを確認することができます。

通風実験棟

風の動きを観察するためのリボン

微風でも動きが感じられるようにリボンをストローに取付けて摩擦を小さくする工夫をしました。

通風実験棟

送風機

この実験を行ったのは2014年末から2015年の3月頃の事で、静岡県藤枝市の工務店、育暮家はいほーむすさんと共同で実施しました。また実験場所については静岡県磐田市の金属加工会社(株)竜洋さんに協力していただきました。私もまだ個人で設計事務所をやっていた頃だったので、時間にいくらかの余裕があって、こんな事も出来たのですが、今からもう一度同じことをやれと言われたら、お断りするでしょうね。面白かったけど大変な実験でした。

この実験内容については、これから数回に渡って本ブログで紹介して行きたいと思います。これを読めば「風の気持ち」がわかるようになるかもしれませんよ!    (松原美樹)

育暮家はいほーむす:https://hihomes.co.jp/

(株)竜洋:http://www.ryuyo.jp/