通風トレーニング① ウィンドキャッチャーの効果
びおソーラーの松原です。
前回は「通風について考える」という事で、2015年に行った通風実験のお話をしましたが、今回から4回に渡って実験結果をご紹介します。
実験①:ウィンドキャッチャーの効果
当時、私がウィンドキャッチャーの設計を依頼された背景として建物正面からぶつかって来る風は窓を開ければ家の中に入って来きますが、建物側面を流れる風を利用したいと思うと何らかの風を導き入れる仕掛けが必要となります。サッシメーカーでは「縦滑り出し窓」を開くことで「ウィンドキャッチャー」になるとしていますが、隣家に面する部位には引違い窓が使われることが多いので、これに組み合わせられる導風装置が欲しいというものでした。
前回ご紹介した南 雄三著・通風トレーニングの中では、建物側面を流れる間接風をつかむ方法として、ウィンドキャッチャー有りの場合の換気量は、無しの場合より6倍も増えていましたので、かなり有効と思われます。まずはこの検証結果を実験で確認してみる事にしました。
【実験概要】ウィンドキャッチャーの有無による通気の違いを確認する。
1-A:入口を窓①、出口を窓⑧としてウィンドキャッチャー無しの状態での通気状況を確認する。
1-B:窓①の「ロ」にウィンドキャッチャーを取付けて、通気の変化を確認する。(ウィンドキャッチャー巾:250mm)
1-A:ウィンドキャッチャー無しの通気量
1-B:ウィンドキャッチャー有りの通気量
1-Aでは風は開口からあまり入っていない事がリボンの動き(赤●)でわかります。一方開口部にウィンドキャッチャーを取付けると通気量が3倍に増えて室の奥まで風が入ってきている事がわかりました。
因みにウィンドキャッチャーの巾を400mmにすると通気量は5倍近くまで増えました。縦滑り出し窓によるウィンドキャッチャーであれば、これくらいの効果が期待できそうです。
窓周りの複雑な空気の動き
ひとつの開口部内でも入ろうとする風と出ようとする風の相反する動きがあることがわかりました。サッシ中央の召し合わせ部周辺では、ウィンドキャッチャーの影響により「入る風」の動きが見られますが、反対側の枠周辺では「出る風」の動きがありました。この傾向は風上側の開口部ほど強く出ていて、計画する開口部を給気口とするのか、排気口とするのか、その目的によって整流の方法に配慮が必要です。
2面開口で計画しよう!
通風には入口と出口がある事が絶対条件で、入口だけでは空気は入ってきません。本実験のように入口と出口を対角に配置すると室の奥まで空気が動くので有効です。間取りによっては1面しか外部に面する開口がない部屋もあるでしょうが、隣室との出入口を開けておくことで2面開口のような空気流れをつくる事もできます。風の気持ちになって部屋の中を移動してみると風が通りたい道が見えるかもしれませんね。(松原美樹)
※本稿で紹介している実験結果は、確かな測定機器で計測したものではありませんから、あくまで傾向を掴むくらいのものです。また5年以上前の実験なので記憶が曖昧な部分が多々ありますから、あまり評価方法や数値等に突っ込まないでくださいね。(笑)