床下の湿気と換気のはなし

空気が止まった床下

ファンが壊れて空気が動かなくなった空気集熱式ソーラーの家の床下

みなさんこんにちは。 びおソーラーの松原です。

いきなりショッキングな写真を出しましたが、これはファンが壊れて数年放置されていた築20年以上の空気集熱式ソーラーの家の床下です。ご覧の通り蜘蛛の巣がいっぱいあり、床を支える鋼製束の足元が湿気で錆びてきています。そして写真ではお伝え出来ませんがとても臭いのです。(この家の床下臭が鼻に残って1週間くらい気分が悪かった) びおソーラーも含めて空気集熱式ソーラーの建物の床下は「基礎断熱工法」を採用し、基礎と土台周りを気密にして集熱空気を床下全体に巡らせるようにしつつ、基礎のコンクリートに蓄熱させます。集熱空気を動かすのは送風機の役目ですが、前述の家ではこれが壊れて、空気が動かなくなってしまいました。基礎断熱工法の床下では空気が自然に入れ替わる事はないのである意味、送風機は建物の「生命維持装置」と言えるでしょう。このような考え方からびおソーラーのハードは「メンテナンス不自由」にさせないようにシンプルな仕様にしているのです。

関連記事:「空気集熱式ソーラーだからこそ空気の動きを止めてはいけない!」https://biosolar.jp/aboutbiosolar/item/

床下の湿気ってどんな感じ?

びおソーラーの有無に関係なく、どんな建物でも床下は湿気が籠りやすい!それはみなさんもご存知のことでしょう。私も感覚的にはそう思っていましたが、実際どの程度なのか知りたくて温湿度調査をしたことがあります。今から2年前ですが、私の愛知県の親戚の家で測定したデータの一部を紹介します。

温湿度測定

床下の湿度調査(愛知県春日井市)

このグラフは2018年8月の3日間の温湿度の様子を示しています。外気湿度が昼と夜で大きく変化する中、床下の湿度はずっと90%前後で推移していました。床上の居間の湿度が60%程度なので、床下の数値の高さが気になります。床下の湿度も冬の時期は床上と大して変わりませんでしたが、5月後半くらいから徐々に上がり始め、夏本番を迎えた頃からこのような状況になりました。調査した建物は以下のようなものです。

所在地:愛知県春日井市  築年数:平成15年完成(築17年)

構造・階数:木造在来軸組工法・平屋

床面積:50坪

断熱工法:床断熱(根太間断熱材充填)+基礎パッキンによる通気

設計・施工:某大手ハウスメーカー

 

室温は居間(床上)が30℃前後で変化する中、床下は26℃程度と低く安定しています。ただ高湿度な環境なので、部位によっては結露が発生している可能性がありそうです。気になって床下に潜ってみましたが、調査時点でカビや虫の大量発生といった問題は起きていないようでした。しかし空気が動いている感じはありません。基礎と土台の間で通気を取っているのですが床下の換気は、外周部で空気の動きが少しはあるようですが、全体としてはグラフが示すようにほとんど動いていないと思われます。この家を長く維持して行こうとするならば、やはり空気が動く仕組みを持たせることが必要と思っています。

今日は夏の湿気の話をしていますが、実はこの家の冬は物凄く寒いのです。特に床が冷た過ぎて、素足で触れることが私にはできません。夜、トイレに行くのに「勇気」がいる家はつらいものがあります。この家が特別という事ではなく、こんな温熱感の家が普通なのかもしれませんが・・・

関連記事:「味覚と温熱感の類似性(私論)」https://biosolar.jp/wp-admin/post.php?post=9183&action=edit

春日井の家の床下

割と綺麗な床下です。ただ断熱材が垂れてきているのが気になります。

基礎断熱ならどうなの?

床断熱と基礎断熱について世の中ではどんな解釈がされているのだろう?とネットで調べてみると断熱方法の違いや材料の事、両工法のメリット、デメリットなどの話は出てくるのですが、換気や湿気の事にはほとんど触れられていません。私が見た数十件の中だけの事ですし、検索方法を変えればヒットするのかもしれませんが、問題視している人は少ないのかもしれません。でも床下の湿気で土台や床下地材などの木部にカビが生えた経験を持つ人は、それなりにいると思います。基礎のコンクリートは大量の水分を持っており、かなり長期に渡って放出し続けますから基礎断熱にして床下を閉じ、空気の入れ替えが不十分だったら、カビも生えるだろうし、木部が傷むのは当然でしょう。シロアリを呼ぶ恐れもあります。びおソーラーであれば乾いた集熱空気が床下全体に回るので湿気を追い出し、木部を乾かすことができますが、こういう仕組みを持たない基礎断熱工法の家の場合、どうやって床下を換気し、湿気を捨てるのでしょう?以前、24時間換気扇のダクトを床下に配して排気している物件を見学したことがあるのですが、あまり空気が動いているように感じませんでした。「でも何も問題ないよ」と言われればそれまでなんですが、どうせ機械換気に頼るのであれば構造がシンプルで耐久性があり、メンテナンス不自由にならないものが良いと思います。とにかく空気を澱ませない事が重要で、これが維持できないと冒頭の写真のような床下になってしまうでしょう。それだけは避けたいですね。(松原美樹)