「おいしい家」をつくりましょう!

びおソーラーの松原です。

各地で紅葉が見ごろを迎えていて、行楽には最高の季節ですね。それと共に朝晩がかなり冷え込むようになってきました。これくらいの時期からびおソーラーが本領を発揮し始めるので、びおソーラーの家にお住まいの方は、「季節」スイッチを「冬」に切り替えて下さい。床下に暖気を送って蓄熱させ、冬支度に入りましょう!

操作スイッチ

びおソーラーは「おいしい家」の隠し味

最近、びおソーラーについてお話しする際によく言ってる言葉があります。それは「家はびおソーラーがなくても建つけど、びおソーラーがあった方がおいしくなりますよ。びおソーラーは家をおいしくするための隠し味なんです。」ということ。私は家の住み心地と料理の味覚には、共通性があると思っていて、過去のブログでも書かせていただいていますが「おいしい家に住んで欲しい」というのが私の切なる願いなのです。https://biosolar.jp/2020/06/%e5%91%b3%e8%a6%9a%e3%81%a8%e6%b8%a9%e7%86%b1%e6%84%9f%e3%81%ae%e9%a1%9e%e4%bc%bc%e6%80%a7%ef%bc%88%e7%a7%81%e8%ab%96%ef%bc%89/

「おいしい家」とは?

「おいしい」とは料理の味を評価する表現ですが、建築にも当てはまると思っています。料理人は食べる人の目を楽しませ、食欲を刺激するために料理の盛り付け方や彩り、場の雰囲気などに心を配ります。出てきた料理の美しさや奇抜さ等に客は「わ~ おいしそう!」と喜びの声をあげることでしょう。それを陰で聞いていた料理人は「よっしゃ!!]とガッツポーズしているのではないでしょうか。建築におけるデザインは、まさに料理の盛り付けに相当するので、すごく重要です。美しい建築物は街の景観をつくり、何より住まい手に愛着を沸かせるものになるからです。でも一番大切なことはその次の行為ですよね。料理で言えば、口に入れて味わってみること。見た目での感動を受けた後は、鼻で香りを感じ、耳で音を楽しみ、最後は舌で味わう事によって「おいしい!」という幸福感を得る事ができると思います。また料理人も客が思わず発した「おいしい!」の一言を聞くために日々努力しているのではないでしょうか。建築における「味」「おいしさ」とは、私は住み心地に他ならないと思っています。室内に身を置いた時の居心地の良さ。目や耳から入ってくるものもありますが、自分の身体を取り巻く空気感の良さが、安心を与えて「おいしい」になるではないかと考えます。「快適」とは暑くも寒くもない丁度良い状態の事を言いますが、そのような環境を素敵な器に盛って提供するのが建築に携わる者の務めではないでしょうか。まさに建築人(設計者も施工者も)は料理人と同じ。料理人が味付けを決めるのは自分の舌ですが、建築人も自分の身体に備わった温熱感覚で、この空間が心地よい場になっているのかを確認した上でお客様に引き渡すべきと思います。安易に設備機器に頼ることは化学調味料による味付けと同じでしょう。デザイン的に評価の高い建物であっても、不快な温熱環境の「まずい建物」もあります。見映えだけの料理ならレストランの店頭に置かれた食品サンプルにだってできる事。建築も恰好だけではなく、おいしさを提供すべきだと思います。

料理人

味は俺の舌が決める!

高性能住宅はおいしい家か?

ある工務店の社長さんから聞いた話ですが、近頃のお客さんの中に見学会にやってきて、いきなり「御社がつくる建物のUA値はいくつですか?」って聞いてくる人がいるのだとか。住宅展示場かどこかで教わったことなんでしょうね。数値の大小だけで優劣をつけたがる人は結構います。ではUA値の優れた家はおいしい家なのでしょうか?

UA値とは「外皮平均熱貫流率」という室内から外部に逃げる熱を外皮(床(基礎)、壁(外壁)、天井(屋根)、開口部)全体で平均した値で、小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性に優れている事を表します。ですがこの数値が小さければ「おいしい家」になるのかと問われれば、私は否と答えるでしょう。とことん性能値に拘った家にしたらどうなるのか?界との関係を極力断つような箱をつくり、空調設備によって内部環境を整えていくという考え方が進んでいくと思われます。ホームオートメーションが導入され、人間が感じたり考えたりする前に機械が判断してやってくれるような家。これが未来の形と言う人、会社がありますが、本当に人はそれを望んでいるのかな? もし地球の大気が汚染されてしまって、自然を取り入れる事ができないという状況ならば仕方ないですが、今はその時ではないでしょう。逆に地球環境を守るために自然を意識しながら暮らして行くべきではないでしょうか。このような設備任せの家で、もし停電が発生して空調設備等が使えなくなった時にその家がどのような状況になってしまうのか? 何となく想像は出来るのですが、一般には全く説明されていないことです。私が実際に性能値に拘った建物を見学した時に感じた事ですが、全体的な空気の澱みと足元と頭部付近の不快な温度差が気になりました。腕のいい料理人のような建築人が味付けをしていたなら「おいしい家」になったかもしれませんが、人が感じる空気感というのは数値では表せないものですからね。

少し批判的な文章になってしまいましたが、私は「バランスが大事である」と思っています。建物の性能を高める事はタダではありませんから要求性能を満たすためには高性能な断熱材や断熱サッシなどが必要で、それにはお金がかかります。施主がそれを望むのであれば構いませんが、例えば私の住んでいる温暖な静岡県に北海道並みの断熱性能を持った家を提案されて、必要以上に高いものを買わされるのであれば考えものでしょう。断熱性能だけで快適になる訳ではないので「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と言われるように、その地域にあった程よい性能を持たせれば良いと思うのです。そして全てを設備機器の判断に委ねるのではなく、人が使い方を考えながら操作するような付き合い方が良いと思います。家に帰っていきなり冷房のスイッチをONにする前に窓を開けて籠った熱気を追い出す。その時にいい風が吹いているならこれを取り入れる方が心地好いだろうし、たとえ都会に住んでいても自然を感じる事は人の気持ちを穏やかにしてくれると思います。

足し算より引き算が大事

「省エネルギー基準」というものが改定されるたびに建築業界は蜂の巣をつついたような騒ぎになります。どうやって基準をクリアすればいいのか? 断熱材メーカーや設備機器メーカーは、ここぞとばかりに売り込みに走ります。このような光景は建築業界だけに限った話ではないですが「エコ」という2文字の意味が、本来は「エコロジー」と「エコノミー」の双方に影響し合うはずなのに多くの場合、後者のエコにしかなっていないことにみんなが気づいているのか、いないのか? 自動車においてエコカーと言えばハイブリッド車で、これにさえ乗っていれば地球環境に優しい気になっているかもしれませんが、高速道路の追い越し車線を猛スピードでかっ飛んでいくような走り方をするならば意味はないでしょう。どんなに優れた技術であっても使い方によっては環境負荷にしかならない事もあるのです。もし本気で地球環境を守りたいのなら小学校の算数の授業で習った通りで「引き算」をしないと負荷は減りません。でも世の中は新しい技術を加える事で数値目標を達成しようとしている。「消費エネルギーを従来品よりも当社比で20%削減しました」とか、そのような宣伝で新しいものへの買換えを増やそうとするメーカーを国も後押ししていますが、計算上は成立するかもしれないけれど「足し算」している限り、絶対に減らないですよね。「使わない」というのが最も環境に負担を与えない行為と言えますが、それでは生活が不便になってしまい、誰からも支持されないでしょう。使わなくても大きな不便にならず、快適を得られる方法を創り出していくことが、これからも地球で生き続けていくために必要なことなのではないでしょうか。

シン・省エネルギー住宅

私たちはびおソーラーと共に「自然室温で暮らせる家」をつくろうという事を提案してきました。自然室温とは、冷暖房していない自然な状態の室温の事を言いますが、これが「快適」と感じる温度範囲内に収まっていれば、エアコン等を使わなくても過ごすことができます。その目標範囲は15℃~30℃くらい。上限、下限域では、我慢できない人がいるかもしれませんが、人は自分の判断で調節のできる生きものですから、寒ければ一枚着るといった事で過ごせるのではないでしょうか。年間を通じてこれくらいの温度環境を維持するためには建築の工夫と自然エネルギーの積極的な利用が必要です。建築の工夫として断熱・気密性を高める事は当然ですが、自然エネルギーを受け入れるために建物の方位や形態なども考慮しなければなりません。特に太陽の存在を意識して計画することがとても重要で、これを無視した自分勝手な形をデザインすると、お日様の怒りをかって目標室温を大きく逸脱する結果になるでしょう。それを誤魔化すために空調設備に頼ってきた建物も多いように思います。「びおソーラー」は家の中にお日様を迎え入れ、共生してもらうための仕組み。お日様が住み着いてくれれば程よい自然室温をつくることは容易です。びおソーラーを導入した建物において自然室温で暮らせる温熱環境になっているかをコンピュータシミュレーションで確認していますので、以下もご覧ください。

https://biosolar.jp/naturalroomtemperature/heatandair/simulation/

またびおソーラーは寒くならない形で換気を行いながら、室内の空気を大きく動かす仕組みです。過去に空き家の事を書きましたが室内の空気が澱むと家にとっても、人にとっても良い事は何もないので、空気の動く環境を作ることが大切と考えます。

太陽エネルギーは、石油などのように枯渇の心配はありませんし、原産国の事情で供給が途絶えたり、価格変動したりすることもない、請求書を送ってこないエネルギーです。びおソーラーは送風機の運転に50~100W程度の送風機を1台使用しているので、そこには電気エネルギーを使いますが、エアコンの消費電力に比べれば微々たるもの。「自然室温で暮らせる家」をつくることは「使わずに快適を得る方法」として有用なものであり、真の省エネルギー住宅とはこういう事ではないかと私は考えているのですが、これを読まれた方はどのように思われるのでしょうね?(松原美樹)