ここでは、そんなしかけをご紹介します。シンプルで壊れにくく、メンテナンスをしやすいことを第一に考えました。
集熱パネル(太陽熱で空気を暖める装置=お日さまの入口)
空気集熱式ソーラーで最も重要なことは、いかに効率よく太陽エネルギーを集めることができるかという事です。太陽は日々、時々刻々と位置を変えながら地球上に膨大なエネルギーを届けてくれますが、これを私たちが利用しやすい形で受け取ろうとするとちょっとした工夫が必要になります。びおソーラーでは「集熱パネル」という装置を屋根や壁など日当たりの良い建物の部位に設置して、集中的に太陽熱を集められるようにしています。
集熱パネルの種類
びおソーラーの集熱パネルは、畳一枚のサイズ(910mm×1820mm)に設定されており、これを複数枚連結して一体の集熱面をつくります。パネルの短辺同士を連結する横型タイプと長辺同士を連結する縦型タイプがあり、建物の大きさや設置条件に応じて選択します。
集熱パネルの構造
集熱パネルの内部は2層構造になっています。上層部は太陽熱を集めて空気を暖める集熱構造、下層部は各パネルでつくられた熱い空気を室内に取入れるために一カ所に集めるダクト構造で構成されています。
集熱パネルが日射を受けると集熱板という黒い金属板が熱を受け取り、直下を流れる空気にその熱を伝えます。ここで重要なのはいかに効率よく空気に熱を伝えることができるかという事で、集熱板だけが熱くなっても空気が温まらなければ意味がありません。
びおソーラーの集熱パネルは独自の空気の流し方により限られた面積の中でも効率よく集熱空気をつくれるようになっています。集熱パネルの最上部にガラスが設置されていますが、これは風により集熱板の熱が奪われる事を防ぐためのもので温室の働きをします。
太陽は日々、時々刻々と位置が変わるので入射角度によってガラス表面や内部の反射で集熱板に届くエネルギー量が増減します。普通の透明ガラスは周りの景色が映り込んで中が見えにくくなる事がありますが、あれはガラスの反射によるものなので「集熱」においては損失になりますから、びおソーラーの集熱パネルは「高透過型ガラス」という反射が少なくエネルギー透過率の高い特殊なガラスを使用して、入射角度が低い朝方や夕方においても集熱できるように工夫しています。
集熱パネルへのこだわり
空気集熱式ソーラーで最も重要な「集熱」ですが、昔は建築工事として現場で集熱面をつくっていました。屋根の野地板の上に通気垂木を設けて金属屋根を葺き、その上に集熱ガラスを載せるという方法ですが、施工者の技量により集熱性能が大きく左右されてしまうという問題がありました。また複数の工種の職人が関わるので施工に時間が掛かり、その分がコストに上乗せされてしまう事も大きな問題でした。
コストとは材料費だけではなく、施工費も含めたトータルバランスで考えるものです。びおソーラーでは、この施工手間を集熱パネルにより大幅に短縮。従来3日から1週間程度かかっていた工事を半日で終わらせられるようにしました。また手間のかかる作業は人為的なミスにつながる事も多いので、出来る限り屋根上の作業は単純明快なものにするように製品として配慮しています。
びおソーラーが集熱パネルを選択している理由については「僕たち、びおソーラー人」の「びおソーラー誕生秘話」もお読みください。
寸法(mm) | W908×L1820×D107 |
重量(kg) | 36 |
カバーガラス | 高透過型ガラス(表面エンボス処理) |
箱 体 | 塗装ガルバリウム鋼板 |
断熱材 | イソシアヌレートフォーム(不燃材料) |
ダクト接続ボックス(集熱空気の室内への玄関口)
ダクト接続ボックスは、屋根に設置した集熱パネルから室内に空気を取入れるためのダクト接続口です。屋根の勾配に合わせた製品を用意しており、建物への設置方法に合わせて出来る限り省スペースでダクティングができるようにと考えたものです。
筐体 | ガルバリウム鋼鈑 |
断熱材 | イソシアヌレートフォーム |
気密材 | EPDM発泡体 |
温度スイッチ(びおソーラーの頭脳)
びおソーラーは日が昇って集熱パネル内の温度が上がるとファンが運転して集熱空気を取入れ、日が沈んで温度が下がると停止するという動きをします。(冬モードの場合)
これらの動作を制御しているのは、冬用と夏用の2種類のバイメタル式温度スイッチで、季節やその時の温熱状況により切り替えて使用します。バイメタル式とは2種類の異なる金属の熱膨張、熱収縮によって接点がON/OFFするという構造のスイッチで、耐久性、信頼性に優れたものを使用しています。
マイコンを使わないという選択
最近の家電品は当たり前のようにマイコンでコントロールされています。以前のびおソーラーにもマイコンを使ったものがありましたが、現在は「マイコン制御を行わない」を基本コンセプトにしています。それは何故か?
確かにマイコンを使うとプログラムによって色々な事ができるので便利なのですが、残念ながら太陽を制御することまでは出来ません。太陽しか熱源を持たないびおソーラーにとって、機器をあれこれ制御したところで大した意味は無い。多少不便な部分があってもアナログ方式のやり方が将来的にも安心と考えて、このような選択をしました。
びおソーラーがマイコンを使わない理由については「僕たち、びおソーラー人」の「びおソーラー誕生秘話」もお読みください。
電動ダンパー(室内外の境界)
電動ダンパーは、集熱空気の流路にあって集熱パネルと室内の境目に位置する電気開閉式のシャッターです。温度スイッチの作動により、ファンと連動して開閉します。
SIZE | A | B | C | D | 重量 | 適用ファンボックス |
MD150 | 260 | 206 | 148 | 129 | 2.6 | SS-F12/F14/F16 |
MD200 | 300 | 256 | 198 | 154 | 3.8 | SS-F17 |
ソーラーファンボックス(びおソーラーの心臓)
空気集熱式ソーラーで最も重要なことは「集熱」ですが、集熱パネルだけで得られるものではありません。集熱パネルの性能を引き出すには送風機が必要で、この2つの技術があって初めて成立するものなのです。びおソーラーのソーラーファンボックスは4種類のサイズのファンを用意しており、建物や集熱面の規模に応じて使い分けます。大容量のファンを採用し風量を制御して用途に合わせるのではなく、「適材適所」という考え方です。
ファンは送風能力に優れ、比較的運転音が静かな交流100V駆動の片吸い込み型シロッコファンを使用しています。最近の換気扇は直流モーターのファンが主流になってきており、そのほうが省エネルギー性の面で優れていることは承知していますが、長期的な使用を考えた場合に今のところは交流の方を選択しています。
型式 | SS-F12 | SS-F14 | SS-F16 | SS-F17 |
寸法(mm)※1 | W340×H275×D232 | W360×H295×D242 | W410×H345×D295 | |
筐体 | ガルバリウム鋼板 | |||
断熱材 | イソシアヌレートフォーム(不燃材料・F☆☆☆☆) | |||
ファン | 片吸込み型シロッコファン | |||
電源 | 交流 単相100V(50/60Hz) | |||
風量(㎥/h)※2 | 252/258 | 300/324 | 強:495/470 弱:365/335 | 強:763/722 弱:640/593 |
消費電力(W)※2 | 21/24 | 28/33 | 強:49/59 弱:41/45 | 強:87/95 弱:74/79 |
騒音値(dB)※2 | 34.5/35 | 41/41 | 強:43.5/42.5 弱:38/36 | 強:46/44.5 弱:42.5/40 |
接続ダクト径(㎜) | 149 | 199 | ||
電動ダンパー | MD-150 | MD-200 | ||
集熱パネル | 2枚 | 2〜3枚 | 3〜5枚 | 5〜6枚 |
ソーラー対象面積※3 | 〜60㎡ | 〜100㎡ | 50〜150㎡ | 80〜180㎡ |
※1 ダクトカラーを除く寸法
※2 50Hz/60Hz地域・無負荷状態での測定値
※3 ソーラー対象面積は目安であり建物条件によって判断は異なります。
ダクト(びおソーラーの血管)
集熱パネルで得た暖かい空気はソーラーファンボックスによって床下へ送られますが、その空気流路を構成する部材がダクトです。びおソーラーのダクトは施工性、保温性、吸音性に優れたグラスウール製ダクトと狭い部位でのダクティングに優れる断熱フレキシブルダクトを用意しています。ダクト配管は人間の身体の血管と同じで空気流路が長く、曲がりが多いとスムーズに空気が流れなくなります。身体も血流が悪くなると末端でしびれが出たり、体組織が壊死したりしますが、建物の場合も隅々まで空気が周るように計画し、空気が澱まないように施工する必要があります。無理なく確実に配管できるようにエルボやチーズといった役物も用意しています。
床吹出し口(お日さまの出口)
床下に送られた集熱空気は、1階の各部に配置された床吹出口を目指して広がって行きます。
びおソーラーの床吹出口は金属製と木製のものがあり、室内の雰囲気に合わせてお選びいただけます。どちらも空気の風量調整機構が付いており床下全体に集熱空気が行き渡るように各吹出口の開口で調節します。床吹出口からはファンヒーターの吹出口のような熱い空気が出てくるわけではなく、秒速1m前後の緩やかな風を掌が感じるくらいなので、決して暖かいとは思えないでしょう。しかし集めた太陽エネルギーは建物内でしっかり働いてくれているのです。
主電源のオン・オフ、夏冬の季節モードの切替、ファンの風量切替だけの、シンプルなスイッチです。
使用するファンや用途によって、スイッチの構成は変わります。
部材のCADデータや施工要領書は、技術資料のページからダウンロードできます。
びおソーラーのハードに対する考え方
空気集熱式ソーラーの設備機器は、冷蔵庫や洗濯機のような一般家電品とは異なり、建築の中に組み込まれてしまう設備になります。洗濯機が故障すればすぐに修理や新しいものへの交換が容易に対応出来ますが、空気集熱式ソーラーでは簡単ではありません。建築に組込まれることで室内の温熱環境を整え、建物の耐久性を維持する役割を担うソーラーファンボックスは「建物の生命維持装置」と捉えていています。その建物が地上にある限り、メンテナンスを受けながら働き続け、空気を澱ませないようにしなければなりません。
「メンテナンス不自由」を生まないためには多機能、高機能な設備よりもシンプルで長持ちするものが良いのです。設備機器をメンテナンスしながら使い続けるためには次の3つの条件が揃わなければ維持して行く事はできません。
- 交換部品が入手できる事
びおソーラーの機器は、一般に多く流通している部品を組み合わせて作られているので
10年、20年先でも同等の部品が入手可能と考えている。 - 交換工事をしてくれる人がいる事
例え部品があったとしても交換できる人がいなければ復旧させることはできない。びおソーラーの電気配線はとても単純な電気回路で組まれているので、電気工事士が見れば容易に対応できると考えている。 - 修理、交換コストが安価である事
びおソーラーの機器は、特殊な部品を使わないシンプルな設計なので元々のイニシャルコストが低い。つまり先々のメンテナンス費用も少なくて済むので、住まい手の負担になりにくいと考えている。
私たちはこのような視点に立ってびおソーラーのハードのあり方を考えました。設備依存型の建築が増えている中で、びおソーラーの設備はミニマムに留めたいと思っています。
空気集熱式ソーラーだからこそ空気の動きを止めてはいけない!
下の写真は、送風機が壊れて3,4年程度放置されていた空気集熱式ソーラーの家の床下です。基礎断熱工法という床下が密閉された空間に対してはソーラーによる換気が重要ですが、送風機の故障で空気の動きが止まってしまったために湿気が籠ってカビが生え、床を支える鋼製の束に錆が発生していました。この家のソーラーシステムは20年以上前につくられたものでしたが「メンテナンス不自由」のために、このような状況に陥ってしまいました。