空気が動く=熱が動く

びおソーラーの家の設計で最も重要なのは、熱と空気の流れをデザインすることです。暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するなど、目に見えない流体の動きをイメージしながら、建物内に熱と空気の流路を組込むことが必要です。平面的にも断面的にも、できる限り空気流れを妨げるようなものを設けないようにし、空気の澱みをつくらないことが設計のポイントです。
以下に、室内の熱循環を考えてみます。びおソーラーは熱媒体が空気なので、「空気が動くこと=熱が動くこと」になります。空気の動きを整理してみると、

  • 暖かい空気は上へ昇る
  • 冷やされた空気は下へ下がる
  • 空気の出入口がないと、空気はうまく動かない

という原則を頭に入れて考える必要があります。

図は、住宅の断面図です。(図1)入口が1か所しかない場合の空気流れを示していますが、この場合、冷たい空気は重いので図のように澱んで動きません。効果的に空気を動かすためには、(図2)のように空気の入口と出口を部屋の対角線上に設けて、澱んだ空気のエリアをつくらないようにすることです。

暖かい空気は上に昇る性質があり、吹抜けがあるとこの傾向は一層強くなって、いわゆる煙突効果が起こります。そして昇った空気の量だけ冷やされて降りてくる空気があり、室内に循環気流が発生します(図3)。この時、下降する気流が強く冷やされるとコールドドラフトとなり、人の居るところへ流れ込むと不快に感じることになるので、(図4)のようにキャビネットや扉を設けて、直接冷気が人にあたらないよう配慮しましょう。特に吹抜けの対面に階段がある場合は、暖かい空気が吹抜けから昇って、冷やされた空気が階段から戻ることになるので、注意してください。

空気の動きをコントロールするというのは、実は水をコントロールするより難しくてなかなか人が思うようには動いてくれません。一番厄介なのは見えない事です。水ならば見えるし、触れて手が濡れれば存在を確認できますが、空気は自分の周り全てを取り巻いており、自分がターゲットとする空気の動きだけを掴むというのは難しいです。しかし見ることは難しくても感じることはできます。空気の動きは「風」という形で存在を伝えてくれます。

それは極々僅かな微風かもしれませんが、この中には必ず熱が含まれていて身体に触れた時に暑いとか寒い、心地いいといった感覚を与えてくれるのです。「熱と空気の動きをデザインする」とは、びおソーラーだから考えなければならない事ではなく、どんな建物でも「快適」にするためには絶対に必要な事なのです。例えばエアコンや換気扇の設置位置とか、窓からの通風やコールドドラフトなど空気の移動が絡むことは色々とありますよね。

エアコンの設置位置もよく考えて!

完成した建物を訪問した際に「何でこんな所にエアコンを付けてるんだろう?」と思う事がよくあります。聞けば暖房負荷計算をしていてこのサイズのエアコン1台で十分に暖かくできるとの事。熱量計算においてはそれで成立するのかもしれませんが、エアコンの設置している位置が悪ければその能力を十分に発揮する事はできないでしょう。
エアコンは室内機と室外機をペアで設置しなければなりませんが、室外機置場と配管の都合から室内機の位置を決めていることが多いように思われます。その際に住まい手が部屋のどの位置で主に生活するかはあまり考慮されておらず、室内機からの暖気、冷気が見当違いの方向へ吹出しているという残念な事例をよく目にします。また大きな吹抜け空間に設置されたエアコンではフルパワーで暖房しても1階の足元は寒いままで、上階ばかりが暖かくなっているという失敗例もありました。暖冷房負荷計算によってエアコンの能力を決めるのは当然ですが、その数値を満たしていれば快適な温熱感が得られる訳ではありません。熱と空気の動きをデザインする事により適切な位置にエアコンを設置してやれば、エアコン本来の性能を発揮させることが出来て、より快適に、より省エネに過ごす事が出来るでしょう。


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熱を蓄える

日中に集熱した太陽エネルギーを床下の土間コンクリートに蓄熱させます。穏やかな温熱環境をつくるための影の主役は「蓄熱」なのです。

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シミュレーションによる効果の確認

1年間の季節の移り変わりの中で室温がどのような状況になるのか、びおソーラーの有無による影響はどの程度なのかをコンターマップで示しました。