続・夏暑く、冬寒い家からの脱却をめざして!
びおソーラーの松原です。
8月22日から義兄の家の解体工事が始まりました。壊してみると色々な事が分かってきたので、気になった部分を見ていきたいと思います。
1階床はALC版の上に均しモルタルでレベル調整して床材を接着していました。当初は床仕上材も撤去し、ALC版だけにしてから新たな床を作るつもりでしたが、接着された床材を剥がす事が困難なので、このままこの上に根太を配して床を張る事にします。
床下は土間コンクリートではなく、土が露出になっていました。写真は建物北側に位置する洗面所の床下辺りで、土は少し湿った感じでした。当該敷地は、北から南へ緩やかに下る住宅地内にあり、北側隣地の方が少し地盤面が高いので、地下水が影響しているのかもしれません。ただ床下に露出する鉄骨部分に腐食等は見られなかったので安心しました。
義母の寝室があった南西角の和室の畳を撤去したところ、壁際に写真のような謎のスリットが設けられていました。よく見ると基礎の床下換気口と位置を合わせているようです。つまり冷たい外気がここから入ってきていた訳ですが、何のためのスリットなのか? 冬はかなり寒かった事でしょう。
この住宅では壁や床のALC版が断熱材を兼ねているという解釈のようで、前述の床納まりのようにALC版に床仕上材を直張りしていましたが、実際には床が冷たすぎて断熱の効果は全く感じられませんでした。最近のこのメーカーの建物ではALC版の上に断熱材が貼られているようなので、25年前のものよりは良くなっていると思われます。
内装仕上材を撤去すると上の写真のような納まりになっていました。外壁は化粧ALC版で内側に75mmほどの空気層があります。ここは鉄骨フレームのブレースや設備配管に利用されているようです。更にその内側には内装材を固定するための木枠が設けられており、石膏ボードが貼られていました。木枠の間には厚30mmの「サニーライト」というポリエチレン系断熱材が写真のように施工されていましたが、設備配管が壁を貫通するような部分で断熱材が存在しなかったり、下の写真のように大きな隙間が生じていたりして、経年劣化によるものなのか、施工不良によるものなのかわかりませんが、断熱の意味をなしていないことは明白でした。
もう一つ気になったのが上の写真です。矢印で示したように木枠の中心から右側は玄関ポーチになっているので、この外側には外壁材のALC版がありますから、ここには断熱材が施工されています。一方、木枠の左側は玄関内になるので室内壁ですから断熱材はありません。ですが写真をよく見ると断熱材の奥に構造用ブレースが設けられていて、この部分は空洞になっています。つまり外壁と室内壁の断熱境界の区分がでたらめで、断熱の意味が全くないという事です。
天井裏には下の写真のような夏の掛け布団程度のグラスウール断熱材が置いてありましたが、壁と天井の境界部辺りの施工がいい加減で、断熱ラインが途切れてしまっている状況でした。
このように解体してみると「夏暑く、冬寒い家」になってしまう理由がよくわかりました。これらを修正していくことが、今回のリフォームのポイントになるでしょう。
調べていて疑問に思ったのですが、このような断熱の仕様や納まりは、ハウスメーカーの指示によるものなのか?それとも現場の判断によるものなのか?という事です。前回のブログに書いたようにメーカーの人間が「夏は暑くて、冬は寒いものですから仕方がないですね」と言い切ってしまう事にも驚きましたが、施工している職人さんたちの断熱に対する知識や技術が25年前と変わっていないならば、現代において使用する材料がグレードアップされていたとしても快適な家にはなっていないかもしれません。多くの人がメーカーのネームバリュー等で選んでしまっていると思いますが、自動車や家電品のように工場で製造されるものとは違って、家は人の手によって具現化されるものなので、メーカーではなく、すべては「人」という事だと思うのです。(松原美樹)