断熱だけでは加温はできません。冬に自然室温で暮らすためには、自然界から熱を取得する必要があります。

得られる熱は無駄なく利用する(ダイレクトゲイン)

熱取得は、びおソーラーだけではなく、窓から入るダイレクトゲインも含めて総合的に考えるべきでしょう。ポイント1において敷地周辺の環境を調べる際に計画建物の東、南、西側壁面への日射の当たり具合を確認しておき、必要な位置に開口を設ける事でダイレクトに熱を取入れる事ができます。直射日光は放っておくと室温を暴力的に上げてしまう恐れがあります。また夜間には開口部が熱の逃げ口になりますからカーテンや内障子などを設けて熱の出入りを調整しましょう。


人間も発熱体

建物の中で生活する人間も発熱体であり、その量は大人1人あたり約100Wと言われています。その他にも生活熱という調理や家電品等から発生する熱もあるので、これらも無駄にしないように利用して行きましょう。

びおソーラーによる熱取得

ダイレクトゲインが得られるならば、その部屋の周辺はそれだけで十分に暖かくなるでしょう。しかし同じ建物に中には全く日が当たらない部屋もあって、そこに大きな温度差が生じます。その差が大きく広がると「ヒートショック」を引き起こす原因になるので注意が必要です。びおソーラーの役割は、このような日当たりの悪い場所に集熱空気を送ることで温度差を小さくできるところにあります。

集熱屋根を設計する

屋根形状、屋根葺き材料

集熱の役割を担う屋根は大変重要な要素です。単純な形状で、できるだけ集熱面を大きく設けられるようにしましょう。寄せ棟より切り妻や片流れの方が集熱面を大きくとることができます。

寄棟
切妻
片流れ

また、屋根の流れ長さもびおソーラーの働きに関係します。集熱通気層を上昇するに従って集熱空気の温度は上がるものの、ある程度行くと横ばいになります。また、流れ長さを長くすることにより抵抗が増し、より送風能力の高いファンを使わなければならなくなります。このように、予備集熱はあった方が効果的ですが、長いほど良いというものではありません。

集熱屋根

予備集熱面の屋根葺き材料は、熱が伝わりやすい黒色または濃色の金属屋根材として下さい。非遮熱鋼板が入手できれば理想的ですが、なかなか流通していないのが現実なので、入手可能な材料で施工して下さい、ただし光沢のある塗装材料(メタリック系のもの)は熱線を反射しやすく集熱には好ましくありません。

屋根の方位

太陽から受ける日射量は、方位によって異なります。下図は、冬至と夏至における垂直面が受ける日射量を表しています。冬は南面の受ける日射量が多く、夏は南面よりも東西面の受ける日射量が多いことがわかります。

方角による壁面日射量の違い(冬至)

方角による壁面日射量の違い(冬至)

方角による壁面日射量の違い(夏至)

方角による壁面日射量の違い(夏至)

方位別集熱特性

集熱について、方位別に以下の特性があります。
● 南向き集熱面:最も多くの集熱量が得られる方位。
● 東向き集熱面:午前中を主とした集熱面。
深夜から早朝にかけて下がった室温を、早く回復させたい場合に適した方位。
● 西向き集熱面:午後を主とした集熱面。
日没までしっかり集熱させて、夜間に必要な熱を少しでも多く集めたい場合に適した方位。
● 北向き集熱面:暖房用の集熱面としては不適当な方位。

集熱パネルの設置方位は、日当たりの良い真南向きが最適ですが、真南から東西各方向へ30度以内であれば問題ないでしょう。特に壁面集熱の場合は、集熱量が限られるので、パネルの設置方法には注意が必要です。

方位別集熱特性

方位別集熱特性グラフ

もし敷地条件等により真南から大きくずれる場合は、集熱面積を増やすか、蓄熱面積を減らす、建物の断熱・気密性能を高めるなどの手法をとります。真南向きが理想ですが、それが難しかったとしても、不足するエネルギー分を他の方法で補えば良いと考えてください。

集熱運転時間を長くすることが重要

冬期のびおソーラーの1日の動きは、日が昇り、集熱運転を開始するのは午前9時前後。徐々に温度が上がっていき、集熱温度がピークに達するのは南中(午後0時)の頃。そこから温度は下がっていき、午後4時頃に停止します。これは集熱面が真南を向いている場合の運転状況であり、方位が西なり、東なりに振れると運転時間は短くなります。びおソーラーの集熱で大切なのは、瞬間的に高い温度を得る事よりも多少低くても長い時間取入れできるように計画する事です。

方位による室温の違い

集熱面の角度

方位に次いで集熱量を左右するのが集熱面の設置角度です。集熱面は日射に対して直角に近いほど、集熱量が増えます。

緩勾配の屋根
急勾配の屋根

季節によって変わる太陽高度と必要とする集熱量から設置角度を求めます。屋根集熱の場合は、屋根勾配が設置角度になりますが、集熱に適するのは3寸勾配以上(高緯度地を除く)です。

勾配による集熱量グラフ

設置角度による集熱量比較グラフ

緩勾配の屋根

緩勾配の屋根では、太陽高度が低い冬場に集熱量が期待できません。この場合には
集熱パネルのみを急勾配に設置して集熱温度を上がりやすくします。

緩勾配の片流れ屋根は、夏場に屋根全体が日射を受け止める事になり、その熱が室内に伝わって冷房負荷を増やす事になります。いくら建物の断熱・気密性能を高めても形状によって外から受ける影響が大きくなりますから自然との応答を考慮したデザインが求められます。

集熱面のつくり方
集熱部

びおソーラーでは、2つの集熱部を組み合わせ、屋根全面を使って太陽熱を集めます。
A 予備集熱面:金属屋根材下に集熱通気層を持たせた、ガラスなし集熱面
B 集熱パネル:棟近くに設置する、高温集熱部

集熱パネルのみでの集熱も可能ですが、集熱する空気の温度をより高め、多くの熱を取入れるために、予備集熱面を設けます。また、夏の放射冷却は、予備集熱面を設けた方が効果的です。

集熱パネルの使い方

集熱パネルは、太陽熱を集めて空気を暖めるための装置です。横設置型と縦設置型の2種類があります。横設置型パネルは、屋根の流れ長さが短い場合や太陽電池との併設、バルコニー手摺等への設置に適しており、縦設置型パネルは主に南側間口の狭い屋根や壁など、限られた面積内で集熱量を増やしたい場合に適しています。

集熱パネルの連結

集熱パネルには、縦型・横型ともに、左端用(L)、中央用(C)、右端用(R)の3種類があり、これらを連結することで一体化された集熱面なります。

集熱パネル裏面には、4か所のダクト接続口の候補が用意されており、断熱材で塞がれています。屋根や壁のダクト貫通位置に合わせて接続口を1か所開口し、集熱パネルを屋根に設置します。

この図は集熱パネル裏面から見たものなので、表面から見た場合とは左右が逆に描かれています。

集熱パネルの設置枚数の目安

集熱パネルの設置枚数に対するびおソーラー対象面積、及びびおソーラー対象容積の目安は以下の通りです(容積は天井高2.5mとして計算しています)。対象面積に幅を持たせているのはびおソーラーの目的別で、暖房重視の場合は小さい値を、換気重視の場合は大きい値を目安にしてください。また、予備集熱面を設けた場合は、ソーラー対象面積を10~20%程度加算して計画してもよいでしょう。

集熱パネル数(面積)びおソーラー対象面積びおソーラー対象容積ソーラーファンボックス
2基(3.3㎡)~60㎡(≒20坪)~150㎥SS-F12
3基(5㎡)~80㎡(≒25坪)~200㎥SS-F14/F16
4基(6.6㎡)~100㎡(≒30坪)~250㎥SS-F16
5基(8.3㎡)~130㎡(≒40坪)~330㎥SS-F16
6基(9.9㎡)~150㎡(≒45坪)~380㎥SS-f16/F17
7基(11.6㎡)~170㎡(≒50坪)~430㎥SS-F17
8基(13.2㎡)~200㎡(≒60坪)~480㎥SS-F17
集熱と蓄熱のバランス

集熱パネルの設置枚数は、建物規模と設置条件に加えて蓄熱面積も大きく関係します。同じ面積でも下図のように総2階建と平屋では蓄熱面積が大きく異なります。集熱と蓄熱のバランスが快適な温熱環境の条件になりますので、蓄熱面積が大きくなる平屋の場合は、図のように集熱面積を増やす(集熱パネルを増やす)か、あるいは蓄熱面積を減らした方がよいでしょう。
また、同じ面積であっても建物形状によっては集熱面を分けて計画した方がよい場合もあります。ファンが複数台になりますが、室内の熱と空気の動きを考慮して適切にゾーニングをしてください。
集熱量に対して蓄熱面積が大きいと室温が上がりにくくなり、逆の場合には室温を安定させることが難しくなります。快適な室温を得るポイントは、集熱と蓄熱のバランスです。


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建物の断熱・気密性能を高める

自然室温で暮らす家をつくるためには、冬に熱を逃さない、夏に熱を入れない、といった住宅の温熱設計が重要です。断熱性能・気密性能を高めるのが、まずは基本です。

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熱を蓄える

日中に集熱した太陽エネルギーを床下の土間コンクリートに蓄熱させます。穏やかな温熱環境をつくるための影の主役は「蓄熱」なのです。