「家」は「土地」の上に建っており、「土地」には日照の良い土地もあれば、雪の多い土地や風の強い土地など様々な特性をもっています。その「土地」の諸条件に合わせて、自然エネルギーを有効に活用しながら快適な住環境を創り出そうとするのが自然室温で暮らせる家の設計です。

方位の確認

敷地、建物の方位は、集熱量に直接関係しますので正確に確認します。集熱面が真南を向くように配置できると理想的ですが、可能かどうかは敷地条件により決まりますので、敷地形状、高低差、接道条件、周辺敷地の様子なども確認します。
方位の確認方法としては、現場で方位磁針を使用して配置図等に「北」を記録するのが簡単ですが、方位磁針が示す「北」は「磁北」であって、「真北」ではありませんので注意してください。磁北は真北より西に4~10°ずれています。真北を正確に測る方法としては、〈真北測定器〉を用いる方法もあります。

日影の確認

敷地内外に建物及び集熱面に対して日影をつくるものの有無を確認します。敷地の東側、南側、西側にある建物や工作物、樹木等について、敷地からの距離、高さ、大きさ等を図面に記録します。特に壁面集熱も採用する場合は、計画している集熱面に対して敷地内外に日影をつくる建物や工作物、樹木等がないか、ある場合にはどの程度の影響を受けるのか等を把握しておく必要があります。
また、計画地の南側隣地が現時点は空地で何もなかったとしても、将来、建物が建つ可能性があるならば、建った場合を想定して計画しておきましょう。

日影図

敷地内外で計画建物及び集熱面に対して日影をつくるものの有無を確認します。CADソフトに付属する「日影図作成機能」などを利用するとよいでしょう。下図は、屋根を集熱面とするので地盤面+5mの高さにおける日影図です。
日影図

周辺状況と集熱部位

方位と日影状況により、建物のどの部位で集熱できるか検討します。

敷地が広く、隣地の建物との間隔が広い場合は、窓からの日射によるダイレクトゲインで部屋は暖められますが、都心など隣棟間隔が狭い場合は、窓からの日射は期待できません。しかし、隣りの建物形状にもよりますが、屋根には隣棟間隔にかかわらず、絶えず太陽が降り注いています。こういった場合は、屋根から太陽エネルギーを室内に取込むことができます。

窓からの日差し
密集地
屋根で集熱

太陽高度が低い冬場において太陽との応答性からみると壁面集熱も有効です。日当たりの良い南側の外壁やバルコニー手摺等に集熱パネルを設置して集熱します。壁面集熱の場合、窓等の配置バランスから大きな集熱面をつくることは難しいですが、集熱パネルのみで局所的な暖房・換気を行うような導入方法が考えられるので、リフォームなどに採用しやすいでしょう。

屋根集熱
壁集熱

浜松の気象概要

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地域の気候特性を理解する

「自然室温で暮らせる家」を設計する上での第一歩は、建設地の気候特性をしっかり理解して、どれくらい自然エネルギーを利用する事ができるかを把握することから。

UA値

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建物の断熱・気密性能を高める

自然室温で暮らす家をつくるためには、冬に熱を逃さない、夏に熱を入れない、といった住宅の温熱設計が重要です。断熱性能・気密性能を高めるのが、まずは基本です。